脳血管障害|理学療法士(PT)国家試験 過去問まとめ
理学療法士国家試験の脳血管障害分野を、複数年分まとめて対策できるページです。片麻痺の評価尺度(SIAS・FMA・NIHSS)、高次脳機能障害(半側空間無視・失語・注意障害)、Pusher現象、痙縮への対応、急性期の画像診断など出題範囲が広い分野で、第60回は5問、第61回は6問が出題されています。年度をまたいで解くことで、繰り返し問われるテーマが見えてきます。
問題文は著作権に配慮して掲載せず、正答番号(厚生労働省が公表する事実データ)と、Network-Primer独自の解説(正答理由・各選択肢の○×)を掲載しています。問題文は各年の全問ページからリンクする厚生労働省の公式PDFでご確認ください。
収録状況
| 年度 | 実施 | 脳血管障害 出題数 | 収録 |
|---|---|---|---|
| 第61回 | 2026年2月 | 6問 | ✅ 解説あり |
| 第60回 | 2025年2月 | 5問 | ✅ 解説あり |
| 第59回 | 2024年2月 | 8問 | ✅ 解説あり |
| 第58回 | 2023年2月 | 6問 | ✅ 解説あり |
| 第57回 | 2022年2月 | ― | 順次追加 |
頻出テーマ(複数年で繰り返し問われる論点)
- 脳卒中の評価尺度:SIASの評価項目と実施方法、Fugl-Meyer Assessment(FMA)の構成、NIHSSに含まれる項目
- 高次脳機能障害:半側空間無視のスクリーニング(線分抹消試験)、失語のタイプ分類、注意障害の検査(CAT)
- Pusher現象:評価尺度(SCP)と、非麻痺側への重心移動を促す介入
- 片麻痺の合併症とリスク管理:肩関節亜脱臼への配慮、内反尖足の痙縮とボツリヌス療法、転倒リスク評価(TUG)
- 急性期の検査・画像診断:超急性期脳梗塞に対するMRI(拡散強調画像)、くも膜下出血の早期診断
第61回(2026年2月実施)
脳血管障害として6問が出題されました(実地5問・一般/共通1問、推定配点16点)。全問の正答・解説は 第61回 PT 全問ページ でも確認できます。
| 問 | 時間帯 | 区分 | 何を問うた設問か | 正答 |
|---|---|---|---|---|
| 問4 | 午前 | 実地 | Pusher現象で優先する検査の選択 | 1 |
| 問5 | 午前 | 実地 | Pusher現象例の移乗動作練習 | 5 |
| 問11 | 午後 | 実地 | 超急性期脳梗塞で次に行う画像検査 | 1 |
| 問15 | 午後 | 実地 | 下肢痙縮のボツリヌス療法投与筋 | 1 |
| 問20 | 午後 | 実地 | 失語症の症状からタイプ判別 | 5 |
| 問38 | 午後 | 専門一般 | 脳腫瘍の発生部位と症状の組合せ | 2 |
午前 問4(実地・正答 1) 問題を見る →
ポイント:右上下肢で押して正中位への修正に抵抗する=Pusher現象(プッシャー症候群)。これを評価するのはSCP(Scale for Contraversive Pushing)。
- ⭕ 1:SCPはPusher現象(対側への押しつけ)を定量評価する尺度。本症例の病態に最適。
- ❌ 2:SLTAは標準失語症検査。失語の記載はない。
- ❌ 3:TMTは注意・遂行機能検査。
- ❌ 4:WAIS-Ⅳは知能検査。
- ❌ 5:WCSTは前頭葉機能(概念転換)検査。
午前 問5(実地・正答 5) 問題を見る →
ポイント:Pusher現象では非麻痺側へ重心移動できないことが移乗自立を妨げる。リーチ動作を用いて非麻痺側へ能動的に重心移動する練習が最も適切。
- ❌ 1:閉眼では視覚による垂直定位の手がかりが失われ、Pusherが悪化する。
- ❌ 2:右上下肢の関節可動域運動はPusher改善に直接寄与しない。
- ❌ 3:右大腿四頭筋の筋力増強は押しつけをむしろ強める可能性。
- ❌ 4:手すりを持つと押しつけの支点を与え、Pusherを助長しうる。
- ⭕ 5:非麻痺側へのリーチ動作で能動的に重心移動を促し、垂直定位を再学習させる。
午後 問11(実地・正答 1) 問題を見る →
ポイント:急性期脳卒中で単純CTで異常なし=超急性期の脳梗塞が疑われる。拡散強調画像(DWI)を含むMRIが超急性期脳梗塞の検出に最も有用。
- ⭕ 1:MRI(拡散強調画像DWI)は発症数時間の超急性期脳梗塞を高感度で検出できる。
- ❌ 2:PETは代謝評価で急性期診断には用いない。
- ❌ 3:SPECTは脳血流評価だが超急性期梗塞の第一選択ではない。
- ❌ 4:造影CTは血管病変評価だが、梗塞巣そのものの早期検出はMRIに劣る。
- ❌ 5:X線検査は脳実質の評価に無効。
午後 問15(実地・正答 1) 問題を見る →
ポイント:脳卒中後の下肢痙縮で内反尖足を呈する場合、ボツリヌス療法の主な投与筋は後脛骨筋(内反)・下腿三頭筋(尖足)。図が内反を示すなら後脛骨筋が適切。
- ⭕ 1:後脛骨筋は足の内反に働き、内反尖足の痙縮に対するボツリヌス投与筋として適切。
- ❌ 2:前脛骨筋は背屈筋で、痙縮による尖足では過活動筋ではない。
- ❌ 3:短腓骨筋は外반筋で内反尖足の原因筋ではない。
- ❌ 4:長腓骨筋も外反筋。
- ❌ 5:長母指伸筋は母趾背屈筋で内反尖足の主因ではない。
午後 問20(実地・正答 5) 問題を見る →
ポイント:言語理解良好・発語流暢・錯語・復唱不良・自己修正の努力(接近行為)=伝導失語。復唱が特に障害されるのが特徴。
- ❌ 1:Broca失語は非流暢で努力性発話。本例は流暢。
- ❌ 2:Wernicke失語は理解障害が重度。本例は理解良好。
- ❌ 3:健忘性失語は喚語困難が主で復唱は保たれる。
- ❌ 4:全失語は理解・表出とも重度障害。
- ⭕ 5:伝導失語は理解良好・流暢だが復唱が著明に障害され、音韻性錯語と自己修正(接近行為)を認める。
午後 問38(専門一般・正答 2) 問題を見る →
ポイント:脳腫瘍の部位と症状の対応で正しいのは、小脳→協調運動障害(運動失調・企図振戦・測定障害)。
- ❌ 1:視床の障害は感覚障害が主で、視力障害は後頭葉・視覚路。
- ⭕ 2:小脳腫瘍は協調運動障害(失調・企図振戦・測定異常)を来す。
- ❌ 3:視交叉の障害は両耳側半盲(視野障害)で、失語ではない。
- ❌ 4:前頭葉障害は人格変化・運動性失語等で、聴力障害ではない。
- ❌ 5:脳幹部障害は脳神経麻痺・意識障害等で、人格障害は前頭葉。
第60回(2025年2月実施)
脳血管障害として5問が出題されました(実地1問・一般/共通4問、推定配点7点)。全問の正答・解説は 第60回 PT 全問ページ でも確認できます。
| 問 | 時間帯 | 区分 | 何を問うた設問か | 正答 |
|---|---|---|---|---|
| 問48 | 午前 | 専門一般 | 小脳梗塞でみられる症候 | 1・3 |
| 問15 | 午後 | 実地 | 血管造影から疑う脳血管疾患 | 3 |
| 問48 | 午後 | 専門一般 | Wernicke-Mann肢位の特徴 | 4 |
| 問91 | 午後 | 共通 | くも膜下出血の早期診断検査 | 2 |
| 問92 | 午後 | 共通 | 脳血管障害の病型別発症数 | 1 |
午前 問48(専門一般・正答 1・3) 問題を見る →
ポイント:小脳は姿勢の平衡、四肢の協調運動、眼球運動の調節を担う。梗塞では四肢・体幹の運動失調、測定障害、眼振、めまい、構音障害などが出現する。
- ⭕ 1:小脳による眼球運動の調節が障害され、注視方向性の眼振などが出現する。
- ❌ 2:球麻痺は延髄の疑核・舌下神経核など下位脳神経核の障害によるもので、小脳症状ではない。
- ⭕ 3:四肢の測定障害や変換運動障害、体幹失調による歩行時のふらつきがみられる。
- ❌ 4:同名半盲は視放線や後頭葉視覚野の障害で生じ、主に後大脳動脈領域の症状である。
- ❌ 5:遂行機能障害は主に前頭葉障害による。小脳性認知情動症候群の報告はあるが典型症状ではない。
午後 問15(実地・正答 3) 問題を見る →
ポイント:若年女性で過換気(熱いものを吹く)を誘因に生じる一過性の片麻痺は、もやもや病に特徴的な虚血発作である。公式正答と選択肢の内容から、脳血管造影は内頸動脈終末部の狭窄と異常血管網を示すと考えられる。
- ❌ 1:脳炎は発熱・頭痛・意識障害やけいれんで発症し症状が持続する。数分で回復する反復性の片麻痺は典型的でない。
- ❌ 2:脳腫瘍の症状は緩徐に進行する。過換気を誘因として数分で消退する発作性の運動麻痺は説明できない。
- ⭕ 3:内頸動脈終末部の進行性狭窄と側副血行路の発達が特徴で、過換気による脳血管収縮で一過性脳虚血発作を生じる。
- ❌ 4:硬膜動静脈瘻は拍動性耳鳴や頭蓋内出血、静脈うっ滞による症状が主体で、過換気で誘発される片麻痺は特徴的でない。
- ❌ 5:アテローム性脳梗塞は動脈硬化の危険因子をもつ中高年に多い。既往のない25歳女性で過換気が誘因という点が合わない。
午後 問48(専門一般・正答 4) 問題を見る →
ポイント:Wernicke-Mann肢位は脳卒中片麻痺でみられる典型的な痙性肢位で、上肢は肩内転・内旋、肘屈曲、前腕回内、手指屈曲をとり、下肢は股関節伸展・内転、膝関節伸展、足関節底屈・内反をとる。よって膝関節伸展位が正しい。
- ❌ 1:肩関節は内転・内旋位をとるのが特徴で、外転位はWernicke-Mann肢位に含まれない。
- ❌ 2:上肢は屈筋優位となるため肘関節は屈曲位、前腕は回内位をとる。伸展位ではない。
- ❌ 3:手指は屈曲して握り込み、母指は内転して手掌に入り込む。伸展位ではない。
- ⭕ 4:下肢は伸筋優位の痙性となり、股関節伸展・内転とともに膝関節は伸展位をとる。遊脚時の分回し歩行の一因となる。
- ❌ 5:足関節は底屈・内反した尖足内反位をとる。背屈位ではない。
午後 問91(共通・正答 2) 問題を見る →
ポイント:くも膜下出血が疑われる場合、まず単純頭部CTを行う。発症早期には脳底槽やシルビウス裂の血液が高吸収域として描出され、短時間・非侵襲的で緊急対応の判断に直結する。
- ❌ 1:腰椎穿刺はCTで出血が確認できないが疑いが残る場合の補助的検査であり、脳ヘルニアの危険もあり第一選択ではない。
- ⭕ 2:単純頭部CTが第一選択。発症直後の感度が高く、迅速に施行できるため早期診断で最も優先度が高い。
- ❌ 3:頭部X線検査では頭蓋骨は写るが、くも膜下腔の出血や脳実質の病変は描出できない。
- ❌ 4:脳血管造影は破裂脳動脈瘤など出血源の同定に有用だが侵襲的で、通常はCTで出血を確認した後に行う。
- ❌ 5:脳血流シンチグラフィは脳循環の評価に用いる検査で、急性期の出血の有無の判定には適さない。
午後 問92(共通・正答 1) 問題を見る →
ポイント:わが国の脳血管障害は脳梗塞が最も多く、全体のおよそ4分の3を占める。高血圧管理の普及により脳出血は減少しており、近年も脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の順で多い。
- ⭕ 1:脳梗塞が最多で脳卒中のおおむね7割以上を占める。心原性脳塞栓症、アテローム血栓性、ラクナ梗塞に大別される。
- ❌ 2:脳出血は脳卒中の2割程度で、以前に比べ減少している。脳梗塞の発症数には及ばない。
- ❌ 3:くも膜下出血は脳卒中の数%程度にとどまり、脳梗塞よりはるかに少ない。
- ❌ 4:脳静脈血栓症は静脈側の閉塞によるまれな病態で、発症数は脳梗塞に遠く及ばない。
- ❌ 5:慢性硬膜下血腫は高齢者に多いが軽微な頭部外傷を契機とする病態で、脳血管障害として最多ではない。
第59回(2024年2月実施)
脳血管障害として8問が出題されました(実地5問・一般/共通3問、推定配点18点)。全問の正答・解説は 第59回 PT 全問ページ でも確認できます。
| 問 | 時間帯 | 区分 | 何を問うた設問か | 正答 |
|---|---|---|---|---|
| 問3 | 午前 | 実地 | 頭部CTから脳血管疾患を判別 | 5 |
| 問18 | 午前 | 実地 | 片麻痺の立位での傾きへの対応 | 3 |
| 問84 | 午前 | 共通 | 脳卒中後嚥下障害の栄養管理 | 5 |
| 問86 | 午前 | 共通 | 頭部MRIによる脳梗塞の診断 | 4 |
| 問4 | 午後 | 実地 | 頭部CTから疑われる疾患の判断 | 4 |
| 問5 | 午後 | 実地 | 続発性水頭症の特徴的な症状 | 5 |
| 問17 | 午後 | 実地 | 脳梗塞急性期の離床可否の基準 | 2・4 |
| 問76 | 午後 | 共通 | 前頭葉損傷で生じる高次脳機能障害 | 2・5 |
午前 問3(実地・正答 5) 問題を見る →
ポイント:入浴中の急な発症で意識障害と左片麻痺を呈しており、右大脳の出血が疑われる。公式正答と経過から、CTでは右の被殻など基底核部に高吸収域(血腫)が描出されていると考えられる。
- ❌ 1:慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷から数週かけて緩徐に進行し三日月形の血腫を示す。突然発症の経過に合わない。
- ❌ 2:くも膜下出血は突然の激しい頭痛が主症状で、脳槽や脳溝に高吸収域を認める。片麻痺で発症することは多くない。
- ❌ 3:発症直後の脳梗塞では単純CTの所見に乏しく、認めてもearly CT signの程度で高吸収域とはならない。
- ❌ 4:脳挫傷は頭部外傷が前提となるが本例に外傷の記載はなく、入浴中の突然発症という経過とも合わない。
- ⭕ 5:入浴中の血圧変動を契機とした高血圧性脳出血が典型的で、CTでは発症直後から血腫が高吸収域として明瞭に描出される。
午前 問18(実地・正答 3) 問題を見る →
ポイント:重心が麻痺側の左へ偏り骨盤が平行棒に寄りかかる姿勢はpusher現象(対側への押し付け)を疑わせる。他動的に押し戻すと押し返す力が強まるため、鏡などの視覚的な垂直の手がかりで傾きを認識させ、能動的に正中へ修正させる。
- ❌ 1:他動的に骨盤を左から右へ押すと、患者はさらに押し返して抵抗を強め、pusher現象を増悪させてしまう。
- ❌ 2:右上肢の前方リーチは矢状面の課題であり、左右方向への重心の偏りを修正することにはつながらない。
- ⭕ 3:鏡で視覚的に垂直を確認させ、自らの傾きを認識して能動的に姿勢を修正させる方法が有効とされている。
- ❌ 4:膝装具は膝折れの防止を目的とするもので、体幹・骨盤が左へ偏る姿勢そのものの改善には直接結び付かない。
- ❌ 5:Raimiste現象は非麻痺側股関節の内外転への抵抗で麻痺側に同じ運動が生じる連合反応。左内転筋の強化は左方への偏りを助長する。
午前 問84(共通・正答 5) 問題を見る →
ポイント:経鼻胃管は導入が簡便だが、チューブによる咽頭刺激・不快感、自己抜去、嚥下訓練の妨げなどの問題があり、おおむね4週間を超える栄養管理では胃瘻などへの変更が推奨される。
- ❌ 1:とろみは液体の流速を落として咽頭通過を遅らせ誤嚥を減らす基本手段で、嚥下障害では積極的に用いる。
- ❌ 2:胃瘻造設後も嚥下機能に応じて経口摂取を併用し、経口摂取への移行を目指すのが標準的である。
- ❌ 3:経鼻胃管でも胃食道逆流や唾液の咽頭誤嚥は起こり、誤嚥性肺炎の危険がなくなるわけではない。
- ❌ 4:末梢輸液だけでは必要エネルギー・蛋白量を満たせないため、点滴でも投与栄養量の把握は必須である。
- ⭕ 5:正しい。経鼻胃管は長期管理には適さず、4週間程度を目安に胃瘻など他経路を検討する。
午前 問86(共通・正答 4) 問題を見る →
ポイント:拡散強調画像〈DWI〉は水分子の拡散低下を捉え、発症直後から梗塞巣を高信号に描出するため急性期脳梗塞の診断に有用である。一方、急性期の脳出血の検出は単純CTが優れる。
- ❌ 1:T2強調画像では水成分が高信号となるため、髄液は低信号ではなく高信号に描出される。
- ❌ 2:MRIは後頭蓋窩の骨によるアーチファクトが少なく、CTより脳幹部の病巣を観察しやすい。
- ❌ 3:T2強調画像でも梗塞巣は浮腫を反映して高信号を示すため、信号変化はみられる。
- ⭕ 4:正しい。DWIは発症数分〜数時間の梗塞巣も高信号として描出でき、急性期診断に有用である。
- ❌ 5:急性期の脳出血は単純CTで高吸収域として明瞭に描出され、CTが第一選択の検査である。
午後 問4(実地・正答 4) 問題を見る →
ポイント:突然の意識障害に著明な血圧上昇と項部硬直(髄膜刺激徴候)を伴う経過は、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の典型像である。公式正答から、CTは脳底部のくも膜下腔に広がる高吸収域を示すと考えられる。
- ❌ 1:髄膜炎も項部硬直を示すが、通常は発熱を伴い数日の経過で進行する。突然発症の重度意識障害は典型的でない。
- ❌ 2:脳腫瘍は頭痛や神経症状が徐々に進行するのが特徴で、突然の意識障害と項部硬直の組合せは説明しにくい。
- ❌ 3:脳膿瘍は発熱と局所神経症状を伴って比較的緩徐に進行する感染性病変で、本例の突然発症には合わない。
- ⭕ 4:正しい。突然発症、血圧上昇、項部硬直はくも膜下出血に特徴的で、CTでくも膜下腔の高吸収域を確認する。
- ❌ 5:急性硬膜下血腫は頭部外傷が前提となり、CTでは頭蓋骨内面に沿う三日月形の高吸収域を示す。
午後 問5(実地・正答 5) 問題を見る →
ポイント:くも膜下出血の2週以降に自発性低下・行動異常・頻回の転倒が出現する経過は、続発性正常圧水頭症を示唆する。公式正答から、CTは脳室の著明な拡大を示すと考えられ、三徴は歩行障害・認知機能低下・排尿障害である。
- ❌ 1:下痢は正常圧水頭症の症状ではない。水頭症では消化器症状ではなく膀胱機能の障害が問題となる。
- ❌ 2:発熱は感染症や急性期の中枢性発熱でみられる所見で、正常圧水頭症の特徴的症状には含まれない。
- ❌ 3:血圧上昇は急性期の頭蓋内圧亢進などで生じうるが、正常圧水頭症の三徴には含まれない。
- ❌ 4:視野障害は後頭葉病変や視交叉の圧迫で生じる症状で、正常圧水頭症に特徴的なものではない。
- ⭕ 5:正しい。尿意切迫から尿失禁に至る排尿障害は、歩行障害・認知機能低下と並ぶ正常圧水頭症の三徴の一つである。
午後 問17(実地・正答 2・4) 問題を見る →
ポイント:急性期脳梗塞の積極的な離床は、神経症状が進行しておらず呼吸・循環が安定し、意識水準が課題に参加できる状態であることを条件とする。心拍数80/分と平均血圧65mmHg以上はいずれも許容範囲の所見である。
- ❌ 1:呼吸数40/分は明らかな頻呼吸であり、離床を見合わせる(中止を考慮する)基準に該当する。
- ⭕ 2:正しい。心拍数80/分は安静時の正常範囲であり、離床を妨げる循環の異常を示さない。
- ❌ 3:神経症状の増悪は病態の進行を示すため、積極的な離床は行わず安静と再評価を優先する。
- ⭕ 4:正しい。平均血圧65mmHg以上は脳や全身の灌流を保てる目安であり、離床を進める条件となる。
- ❌ 5:RASS−3は中等度鎮静で、呼びかけに動きや開眼はみられるがアイコンタクトが保てない状態であり、指示に従えず積極的な離床には適さない。
午後 問76(共通・正答 2・5) 問題を見る →
ポイント:2つ選べ。前頭葉の損傷で生じるのは、運動前野などの障害による肢節運動失行と、左下前頭回の障害によるBroca失語である。他の3つは頭頂葉や後頭側頭領域の障害で生じる症状である。
- ❌ 1:視覚失調(optic ataxia)は頭頂後頭移行部の障害で、視覚に導かれたリーチ動作が障害される。
- ⭕ 2:肢節運動失行は運動前野など前頭葉の障害で生じ、四肢の動きが拙劣・不器用になる。
- ❌ 3:触覚失認は頭頂葉(体性感覚連合野)の障害で、触覚のみで対象を同定できなくなる。
- ❌ 4:相貌失認は後頭側頭領域(紡錘状回顔領域)の障害で生じ、前頭葉損傷による症状ではない。
- ⭕ 5:Broca失語は左下前頭回(弁蓋部・三角部)の障害による非流暢な運動性失語である。
第58回(2023年2月実施)
脳血管障害として6問が出題されました(実地1問・一般/共通5問、推定配点8点)。全問の正答・解説は 第58回 PT 全問ページ でも確認できます。
| 問 | 時間帯 | 区分 | 何を問うた設問か | 正答 |
|---|---|---|---|---|
| 問3 | 午前 | 実地 | 頭部MRIから画像所見を判読 | 5 |
| 問90 | 午前 | 共通 | 発症2時間の脳梗塞の画像所見 | 5 |
| 問36 | 午後 | 専門一般 | 高次脳機能障害と症候の組合せ | 5 |
| 問77 | 午後 | 共通 | 頭部CTで低吸収を示す病変 | 2 |
| 問82 | 午後 | 共通 | 脳卒中の歩行自立の予後因子 | 5 |
| 問90 | 午後 | 共通 | 脳梗塞の原因と病態 | 3 |
午前 問3(実地・正答 5) 問題を見る →
ポイント:高血圧と糖尿病を長年治療している高齢者に、緩徐に進行する歩行障害と易転倒性がみられている。公式正答から、FLAIR像では穿通枝領域に多発する高信号病巣と白質病変が描出されていると考えられる。
- ❌ 1:視床出血は急性発症の片麻痺や感覚障害を呈し、慢性期は限局した嚢胞性変化を示す。緩徐進行の経過と合わない。
- ❌ 2:硬膜下血腫は頭蓋骨内板に沿った三日月形の貯留として描出され、穿通枝領域に多発する病巣とは異なる。
- ❌ 3:くも膜下出血は突然の激しい頭痛で発症し、脳槽・脳溝に沿った出血を示す。数か月単位の歩行障害の説明にならない。
- ❌ 4:歩行障害という症状は合致するが、脳室拡大やDESHなどの水頭症所見が必要であり、公式正答は多発性脳梗塞である。
- ⭕ 5:高血圧・糖尿病を背景に穿通枝のラクナ梗塞が多発すると、小刻み歩行や易転倒性を来す。本例の経過に合致する。
午前 問90(共通・正答 5) 問題を見る →
ポイント:拡散強調像(DWI)は細胞性浮腫による水分子の拡散低下を反映し、発症数分〜1時間程度で高信号となるため超急性期の脳梗塞検出に最も鋭敏である。単純CTの低吸収域やT2強調像の高信号が明瞭化するのは数時間以降で、発症2時間では捉えにくい。
- ❌ 1:単純CTでの高吸収域は出血や閉塞血管内の血栓(hyperdense MCA sign)を示唆する所見で、梗塞巣そのものの典型像ではない。
- ❌ 2:単純CTでの低吸収域が明瞭になるのは通常発症6〜24時間以降で、2時間では早期虚血変化がわずかに見える程度にとどまる。
- ❌ 3:T1強調像では梗塞巣は遅れて低信号を示すのが一般的で、超急性期に高信号となることはない。
- ❌ 4:T2強調像の高信号は血管性浮腫を反映し、出現は発症数時間以降であるため発症2時間では検出が困難である。
- ⭕ 5:拡散強調像の高信号は細胞性浮腫を反映し、発症直後から描出される。発症2時間の典型所見であり正答。
午後 問36(専門一般・正答 5) 問題を見る →
ポイント:肢節運動失行は、麻痺や失調では説明できない拙劣さが四肢の運動に現れるもので、習熟した行為の遂行がぎこちなくなるのが特徴である。中心前回・中心後回など病巣と対側の上肢に出現しやすく、組合せとして正しい。
- ❌ 1:敬礼など単純な口頭指示による動作(自動詞的動作)ができないのは観念運動失行の特徴である。
- ❌ 2:純粋失読は文字を指でなぞると読めるのが特徴で、なぞっても読めないという記述は誤りである。
- ❌ 3:伝導失語は復唱障害と音韻性錯語が主体で呼称は比較的保たれる。呼称困難が中心なのは健忘失語。
- ❌ 4:道具を適切に使用できない、一連の行為の順序が乱れるのは観念失行の症状である。
- ⭕ 5:使い慣れた行為の遂行がぎこちなく拙劣になるのが肢節運動失行であり、組合せとして正しい。
午後 問77(共通・正答 2) 問題を見る →
ポイント:単純CTではX線吸収の大きいものが高吸収(白)、水分など吸収の小さいものが低吸収(黒)に描出される。急性期の出血や石灰化は高吸収、組織が融解して水分が増えた陳旧性の病巣は低吸収となる。
- ❌ 1:くも膜下出血は急性期には脳槽や脳溝に沿った高吸収域として描出される。
- ⭕ 2:○。脳梗塞慢性期は壊死組織が吸収・嚢胞化して水分が増えるため、明瞭な低吸収域となる。
- ❌ 3:脳出血急性期は血腫内のヘモグロビン蛋白により高吸収域を示す。
- ❌ 4:急性硬膜下血腫は頭蓋骨内板に沿った三日月型の高吸収域として描出される。
- ❌ 5:脈絡叢の石灰化はカルシウムのためX線吸収が大きく、著明な高吸収域となる。
午後 問82(共通・正答 5) 問題を見る →
ポイント:歩行の自立には下肢の運動麻痺、体性感覚(とくに深部覚)、注意機能や空間認知といった姿勢制御に直結する要素が関与する。失語症は言語の障害であり、指示理解の困難が訓練を妨げることはあっても歩行能力そのものへの関連は最も小さい。
- ❌ 1:半側空間無視があると麻痺側空間に注意が向かず、障害物への接触や進行方向のずれが生じ歩行自立を妨げる。
- ❌ 2:両側性片麻痺では両下肢に運動麻痺が及び、支持性と振り出しがともに低下するため歩行自立の大きな阻害因子となる。
- ❌ 3:深部覚障害では下肢の位置覚・運動覚が低下し、立脚期の支持が不安定となる。視覚代償が必要で自立度が下がる。
- ❌ 4:注意障害があると二重課題下の歩行や環境変化への対応が困難となり、転倒リスクが高まって自立を妨げる。
- ⭕ 5:○。失語症は言語の表出・理解の障害であり、歩行に必要な運動・感覚・注意の機能そのものは直接障害しない。
午後 問90(共通・正答 3) 問題を見る →
ポイント:非弁膜症性心房細動では左房内、とくに左心耳に血栓が形成され、遊離した血栓が脳動脈を閉塞して心原性脳塞栓症を起こす。予防には抗血小板薬ではなく抗凝固薬が用いられる。
- ❌ 1:脳動脈瘤はくも膜下出血の主要な原因であり、脳梗塞に多く合併する病変ではない。
- ❌ 2:わが国の死因第1位は悪性新生物である。脳血管疾患は上位を占めるが第1位ではない。
- ⭕ 3:○。心房細動により左房内に生じた血栓が塞栓源となり、心原性脳塞栓症を起こす。抗凝固療法が予防の基本である。
- ❌ 4:急性期の死亡率はくも膜下出血の方が高く、脳梗塞の方が高いとする記述は逆である。
- ❌ 5:心原性脳塞栓症では抗凝固薬が選択されるなど、病型により薬剤は異なり一律に抗血小板薬とはならない。
この解説について
本コンテンツは教育目的で無償公開しています。正答番号は厚生労働省が公表する事実データ、解説は株式会社Network-Primerが独自に作成したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。
出典:「第58回〜第61回理学療法士国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成。
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出典:「第58回〜第61回 理学療法士国家試験、作業療法士国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)(第61回の公表ページ)を加工して作成
※ 解説は株式会社Network-Primerが独自に作成したものであり、厚生労働省の公式見解ではありません。本コンテンツは教育目的で提供しており、営利目的での利用を意図するものではありません。
最終更新:2026-09-10
監修:永岡誠司・津川義弘・田村和久(やしまリハビリステーション)・前田匡史(せと)(いずれも理学療法士・当社勤務)
本コンテンツは、職員の受験支援用に作成し、実際に社内で使っている教材を公開しています。
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